2015年3月3日火曜日

ラッキーガールズ

お昼ご飯を買いに外に出て、横断歩道で信号待ちをするために立ち止まろうとしたその瞬間、歩行者用信号が青に変わった。私は声を出さずに口の形だけで「ラッキーガールズ」と言った。

ガールでもまして複数人でもない私だけど、これは高校時代仲良くしてた友達がよく口にしていたおまじないみたいなものだ。私も彼女も日本人だしクソ田舎の漁村出身なんだけど。
何かちょっとしたタイミングの良さに遭遇するたびにこのフレーズを早口でつぶやくという二人の間だけの決めごとがあった。
言った?言った。うちら余裕だよね。余裕だよ。

彼女とはもう随分会ってない。実は東京の人と結婚して近所に住んでいるから、よくご飯に誘ってくれるしいつでも会えるんだけど、いつもどちらからともなく話が流れてしまう。
彼女は今も昔も変わらず面白くていいやつだ。だけどなぜだか大人になって会ってみるとうまく話ができなくなっていた。彼女に話したいことも、聞きたいことも気楽に話せるような話題もなにひとつなくなっていた。多分私も彼女も変わったんだろう。

矛盾してるみたいだけど、私は今でも彼女のことが好きだ。彼女も私を好きだと思う。会いたいなと思うこともあるけどたぶんもう会わないほうがいいと思う。
明るくて涙もろくて友達が100人くらいいて、だけど誰にも自分の暗い面を見せない優しいタフさを持っていた。いつだってラッキーであって欲しいと思う。
そんな相手っていませんか。

とにかく12年前の決めごとだけが残った。ラッキーガールズ。
言った?言った。うちら余裕だよね。余裕だよ。

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